季刊 住宅土地経済の詳細

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タイトル 季刊 住宅土地経済 1997年冬季号
発行年月 平成9年01月 判型 B5 頁数 40
目次分類テーマ著者
巻頭言住宅政策の弾力的かつ機動的運用を救仁郷斉
座談会住宅・土地経済学の成果と課題岩田一政・金本良嗣・八田達夫・柳沢厚
研究論文居住環境指標の妥当性浅見泰司
研究論文新規住宅供給と居住水準の改善駒井正晶
内容確認
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トリアル
ノート
 専門家以外にはあまり知られていないが、経済学の1分野として指数理論がある。指数理論を知らない人も、消費者物価指数やGNP といった各種の指数のお世話になることは多いはずである。
 指数理論は、それぞれの指数が持つ性質を調べたり、特定の目的のために適した指数はどういうものであるかを研究するものである。指数理論にはいくつかのアプローチが存在するが、以下の二つのアプローチが最も重要である。
 第一は、経済学的アプローチであり、指数に表現させたい(経済的な)性質を特定し、その性質を表現する指数を探すといったものである。たとえば、生計費指数は、価格体系が変化したときの生活費の変化を表現しようとするものであるが、指数の経済理論では、ある一定の効用水準を達成しようとする際に必要な所得(あるいは、支出)額が、それぞれの価格体系のもとでどれだけになるかということを出発点として、それをうまく表現できるような指数を考える。また、国民の厚生水準を貨幣単位で表現するためには、どのような実質国民所得の計算法が望ましいかといった問題も考えられている。
 第二のアプローチは、公理的アプローチであり、指数が満たさなければならない条件をいくつか指定し、それらを満足する指数をみつけようというものである。
 
 浅見論文は、策二の公理的アプローチを用いて、居住環境指標を構成する際の注意点を指摘している。浅見論文で考察されているひとつの例は、分数型指標である。これには、人口を地域面積で除した人口密度や、延べ床面積を地区面積で除した容積率などがある。分数型指標に関する公理的アプローチでは、どのような条件を要求するとこれらの分数型指標が出てくるのかを調べる。
 浅見論文によれば、連続性、単調性、類似性の三つの条件をすべて満たす指標(指数)は、分数型指標あるいはその単調変換しかない。容積率を例にとると、この結論は以下のことを意味している。(a)延べ床面積または地区面積が微小だけ変化すると容積率の変化も微小であり(連続性)、(b)延べ床面積が大きくなると容積率は高くなり(単調性)、(c)同じ容積率の地区を二つ合わせても、容積率は変わらない(類似性)ならば、容積率は、φ(延べ床面積/地区面積)の形でなければならない。この結論を用いると、類似性が成り立つかどうかが、分数型指標を用いるうえでのチェック項目として重要であることがわかる。
 浅見論文は、分数型指標に加えて、加算型指標や和比率型指標の分析も行なっており、興味深い結論を得ている。それらについては、論文の本文をお読みいただきたい。
 
 駒井論文は、アメリカでさかんに議論されたフィルタリングの問題を扱っている。通常のフィルタリングの議論は、居住者が引越しをして住宅の住み替えが起きることを想定している。典型的な例は、住宅が新築されてそこに入居する家計がいると、その家計が住んでいた住宅は空き家になり、そこに新しい家計が入ってくるというものである。アメリカでは中古住宅市場が大きな比重を占めているので、このような住み替えのプロセスが大きく取り上げられている。
 フィルタリングの存在はアメリカにおける住宅政策の議論にも影響を与えてきた。それは、中堅および高所得層のための住宅供給がなされると、フィルタリングのプロセスを通じて、その影響が低所得層にまで波及するというものである。したがって、低所得層用の住宅を新規に供給するかわりに、中堅および高所得層用の住宅がスムースに供給されるようにすればよいといった主張がなされた。
 駒井論文は、このような住み替えに焦点を当てたフィルタリングの捉えかたを拡張して、「なんらかの外生的なインパクトが、既存住宅ストックのサブマーケットに対して及ぼす間接的な影響」をフィルタリングとして定義し、日本の住宅市場にこの広義のフィルタリングが存在しているかどうかを実証的に検証している。
 駒井論文の実証結果によれば、住宅の新規供給は低水準居住を減少させる効果を持つが、持ち家の建設に限るとこの効果はほとんど存在しない。ただし、持ち家の建設でも、住宅金融公庫融資を受けた部分については、広義の低水準居住を減少させる効果が認められている。(K)
価格(税込) 750円 在庫

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