タイトル | 季刊 住宅土地経済 1998年冬季号 | ||||
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発行年月 | 平成10年01月 | 判型 | B5 | 頁数 | 40 |
目次 | 分類 | テーマ | 著者 | |
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巻頭言 | 官民協働により土地有効利用の促進を | 田中順一郎 | ||
座談会 | 金融大改革は住宅市場にどのような影響を及ぼすか | 岩田一政・J.ジェイムス・島田明夫・吉野直行 | ||
研究論文 | マンション価格指数と収益性 | 中村良平 | ||
研究論文 | カナダにおける住宅金融政策の推移 | 鴨池治 | ||
海外論文紹介 | イギリスにおける住宅価格の動学分析 | 杉野信一郎 | ||
内容確認 | バックナンバーPDF | |||
エディ トリアル ノート | 中村良平論文「マンション価格指数と収益性」は、ヘドニック・モデルとリピートセール・データを組み合わせることによって新築ならびに中古住宅の価格指数を計測し、日本の住宅市場の特性を分析した力作である。1975年1月から93年12月の期間に竣工されたマンションの販売価格と81年1月から95年3月にかけての再販売価格のデータを基にして(1)京浜東北・埼京線(2)中央線・青梅線(3)千代田線・常磐線沿線の住宅価格指数を推定している。 興味深いファクト・ファインディングとしては、まず第1に、新築住宅価格と比較して中古住宅価格のほうが株価や土地など資産価格の動きと類似した動きを示していることである。特に中央線・青梅線沿線でバブルの影響が大きく、1985年以降は他の沿線よりも価格上昇幅が大きかった。 第2に、住宅保有によるキャピタル・ゲインとインカム・ゲインを価格指数に基づいて推定していることである。キャピタル・ゲインについては1990年にピークに達しており、75年に建設された住宅がもっとも高いキャピテル・ゲイン(5年間で92%)を上げている。インカム・ゲインは、計測された中古住宅価格指数に定期預金金利をかけて基準賃貸価格としたうえで、消費者物価指数における家賃指数を基準賃貸価格に掛けた値を価格指数で割ることにより得たものである。この計測方法によると、1985年あたりまで7%程度あったインカム・ゲインは、最近は3%以下へと低下している。いずれにしても本論の計測結果をみる限り、バブルの時期には住宅資産の超過収益率はかなり大きなものであったが、1987年以降に建設された住宅についてはキャピタル・ゲインが95年時点でマイナスになっていることは興味深い。 鴨池治論文「カナダにおける住宅金融政策の推移」は、カナダにおける戦後の住宅政策をレヴューしたものである。1946?67年の時期には住宅不足を解消するために、当初カナダ住宅金融・公社(1945年設立)が許可を得た民間金融機関に対して低利の資金を提供した。1947年にはカナダ住宅金融公社自身が融資を行なうようになった。1954年には公認民間銀行も住宅ローンを提供できるようになり、カナダ住宅金融公社はモーゲージ・ローン保険提供を行なうようになった。1967年の銀行法改正により民間保証会社の保証のついた約定住宅ローンが認められ、住宅ローン市場における公認民間銀行のシェアが高まった。 1970?84年のスタグフレーションの時期には、とりわけ都市部スラム街における社会的弱者(老人、身体障害者、低所得者)に対する住宅政策が強化され、民間非営利共同グループもカナダ住宅金融公社の支援の下に活発に活動するようになった。さらに最近では、1986年にカナダにおいてもアメリカのジニーメイ債と類似したパススルー証券が、カナダ住宅金融公社による認可が与えられた民間機関によって発行されている。このパススルー証券は、国民住宅法により保証された住宅ローン債権のみがプールの対象となる。 日本の住宅政策への政策的な意味合いについて鴨池論文では、住宅金融公庫による信用保証機能の活用、社会的弱者への住宅提供、証券化の三つをあげている。日本でも住宅ローンのリファイナンスが行なわれるようになると住宅金融公庫による信用保証や証券化が実行されるようになると考えられる。ただし、日本の場合には、住宅金融公庫ローンが住宅ローン市場で占めるシェアが大きく、個人は公庫と民間銀行の両方から借り入れるのが通常であるため、ジニーメイのように住宅金融公庫自身がリファイナンスを行なう場合には自己のローンの証券化を行なうことになる。もちろん、住宅金融公庫が認めた民間機関にリファイナンスを行なわせることも可能である。さらに日本では公庫ローンの繰り上げ償還が大きな問題になっているのでキャッシュ・フローの組み替えを行なうモーゲージ担保証券(CMO)を発行する必要がある。アメリカでは1983年にフレディ・マックが最初にCMOを発行している。社会的弱者への住宅供給については、貧困高齢者向けの住宅供給、とりわけ木造住宅密集地域における建て替えが重要な政策課題になっているといえよう。(I) |
価格(税込) | 750円 | 在庫 | ○ |
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