季刊 住宅土地経済の詳細

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タイトル 季刊 住宅土地経済 2005年冬季号
発行年月 平成17年01月 判型 B5 頁数 44
目次分類テーマ著者
巻頭言内需の柱に住宅投資を宮繁護
座談会この10年の住宅・不動産と今後の行方岩田一政・金本良嗣・小峰隆夫・山本繁太郎
研究論文不完全な不動産市場における供給者の市場選択前川俊一
研究論文家屋および土地の資本コストと税制によるdead weight loss石川達哉
海外論文紹介ヘドニックモデルのセミパラメトリック・ノンパラメトリック直井道生
内容確認
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ノート
 本号の2論文は、不動産市場における供給者の市場選択の問題を分析した理論的な研究と、持ち家の資本コストを導出し、それを用いて税制による歪みを扱った実証研究である。いずれも日本では数少ない貴重な研究であり、興味深いものである。
 
 前川俊一論文(「不完全な不動産市場における供給者の市場選択」)は、不動産市場では、一物一価が成立していないという不動産市場の不完全性に着目し、そこで供給者が取る戦略を検討することによって、どのようなタイプの市場が成立するかを検討している。
 不動産市場における供給者の売却方法としては、大別して、探索市場(search market)で行なう場合と、オークション(auction)で行なう場合が考えられるが、前川論文では、探索市場での売却に焦点をあてている。探索市場で供給者が売却する方法としては、さらに物件と売り希望価格を公開して買い手を探索する登録市場(listing market)で行なう場合と、公開せずに独自に探索する交渉市場(bargaining market)で行なう場合が存在する。一方、オークションによる売却は、もちろん、買い手を探索するのではなく、オークションを通じて、供給者が物件を売却しようとする方法である。なお、探索市場のひとつである登録市場には、買い手の価格交渉に応じない定価市場と、価格交渉に応じる物件登録市場の2つがある。
 前川論文は、このようにさまざまな供給者の売却方法が存在する不動産の探索市場において、競争条件と、物件登録の有無の関係を、ゲーム論の考え方に基づいて検討している。具体的には、供給者の期待利益最大化行動を分析することによって、競争的市場において物件を登録することが選択され、競争的でない市場において登録しないことが選択される傾向があると示唆している。
 このように、前川論文は、不完全な不動産市場構造の本質を検討している日本では数少ない研究であるが、今後は、論文でも言及されているように、日本では競売市場の問題は重要性を増しており、オークションを含めた不動産の処分方法を検討する必要があるものと思われる。
 
 石川達哉論文(「家屋および土地の資本コストと税制によるdeadweight loss」)は、持ち家の産み出す住宅サービスの対価である帰属家賃を、居住用の家屋の資本コストとその敷地である土地の資本コストに基づいて計測し、所得・住民税制も含めた住宅関連税制がそれぞれの資本コストと帰属家賃へ及ぼす影響を通じて、住宅サービス市場における効率上の損失をどの程度発生させてきたかを、都道府県別の死重的損失を計測することによって検証している。
 具体的には、まず、税制と資本コストの関係を分析する手法をていねいに説明した後に、家計の通時的な予算制約下の効用極大化問題を解くことによって、家屋と土地の資本コストを理論的に導出し、それを計測している。なお、実際の資本コストの計測では、土地部分も、1999年以降は住宅ローン残高に応じた所得税の税額控除の対象になったという点も考慮している。そして、次に、住宅サービスの需要関数を、生産関数アプローチを用いて、沖縄を除く46都道府県の8年間のパネルデータを用いて推計し、そこで求められた所得弾力性と価格弾力性の値を利用して、所得税、住民税、固定資産税、取得時のみにかかる不動産取得税、登録免許税、消費税や固定資産税の軽減措置など、現行税制を詳細に考慮してdeadweight lossを計測している。
 全体的に、非常にていねいに理論モデルの導出過程、使用したデータや税制度の説明などがなされており、また、都道府県別の8年にわたる資本コストや帰属家賃、deadweight lossの値などが、限られた紙面にコンパクトに要領よくまとめられており、他の研究者が参考としやすい形になっている。
 今後は、筆者も言及しているように、資本コストは、期待価格上昇率の定式化によって大きな影響を受けることは周知の事実であり、さまざまな定式化を検討してみる必要があるものと思われる。
 また、地域の視点を、より前面に出した分析をすることも可能であると思われる。(SM)
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