タイトル | 季刊 住宅土地経済 2006年冬季号 | ||||
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発行年月 | 平成18年01月 | 判型 | B5 | 頁数 | 44 |
目次 | 分類 | テーマ | 著者 | |
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巻頭言 | 官民協働による早期防災対策の実現を | 安芸哲郎 | ||
特別論文 | 新しい住宅基本法に期待する | 黒川洸 | ||
座談会 | 住宅政策の未来展望 | 和泉洋人・大竹文雄・八田達夫・野城智也 | ||
研究論文 | 環状線道路混雑料金下での都心の容積率緩和の費用便益 | 八田達夫・久米良昭・唐渡広志 | ||
研究論文 | わが国8大都市におけるキャップレートの把握 | 久恒新・福井康子 | ||
海外論文紹介 | 都市空間構造 | 中川雅之 | ||
内容確認 | バックナンバーPDF | |||
エディ トリアル ノート | 八田達夫・久米良昭・唐渡広志論文(「環状線道路混雑料金の下での都心の容積率緩和の費用便益」)は、容積率規制を緩和することによって発生する便益と、それに伴って発生する混雑費用を同時に推計したうえで、人々の経済厚生にどのような影響が及ぶかを分析した重要な研究である。これまでは、容積率上昇による便益と混雑費用は独立に推計されてきた。しかし、容積率規制を緩和する際の純便益を計算するためには、両者の分析を統合しなければならない。 この分析の第1の特徴は、容積率規制の緩和によって生じる集積の利益を実効労働力の効率性指標で測るという点にある。この指標は、各地区間の近接性を考慮して、face to faceコミュニケーションの重要性を示している。 第2の特徴は、容積率の緩和によって生じる労働需要の増大がどの程度の交通量とどのような方向の交通量を発生させるかを計量的に明らかにした点である。ここでは、道路交通センサスによる走行時間のシェアにしたがって、交通量の増加を配分するという方法を用いている。東京23区全体で20%の容積率上昇によって、140万人の就業人口が増加する結果、総交通量は2.1%増大する。さらに道路課金が導入されると、総交通量は2.3%増大するという結果が得られている。 この理由は、混雑料金が導入されることによって、交通ピーク時の混雑が緩和されて、それが交通量の増大をもたらすからであろうか。しかし、自動車走行の平均速度は、道路課金制の導入によって、時速19.0kmから18.9kmに低下するという結果が得られている。この結果はいくぶん奇妙である。走行速度が落ちているにもかかわらず、総交通量が増大するというのは、本来の混雑料金の課金対策が十分に機能していないことを示しているのだろうか。 その他いくつかの問題点はあるが、こうした容積率規制の緩和によって、23区での20%の容積率の緩和は、8.1兆円の純便益をもたらしていることが明らかにされた。また、丸の内・大手町地区だけでの容積率規制の緩和を実施した場合にも、およそ5400億円の純便益が得られるという結果が得られている。こうした容積率規制緩和の純便益を経済学的観点から推定したのは初めての試みであり、高く評価されるべきものと思われる。 久恒新・福井康子論文(「わが国8大都市におけるキャップレートの把握」)は、ヘドニックアプローチを用いて、日本の大都市のキャップレートが持ち家と賃貸住宅で、どの程度差異があるかを成約ベースのデータを用いて、地域的に分析した興味深い研究である。キャップレートとは言うまでもなく賃料を割り引く際の還元利回りである。この論文では、キャップレートを求めたHamilton and SchwabとPhillipsの2つの業績を比較して、優れていると評価されたPhillipsの分析を応用して、日本の住宅市場について分析している。 Phillipsの論文では、pooled-tenure hedonicモデルを使って、賃貸住宅と持ち家住宅に構造上の差異はないと仮定したうえで、賃貸か持ち家かというダミー変数を用いて一本の方程式で推定している。しかし、よく知られているように、持ち家と賃貸住宅市場に構造上の差異がある。著者たちのデータを見る限りでも、両者の属性に差異がないとは言い切れないように思われる。 しかし、こうした問題点があるにしても、いくつかの興味深い結論が導かれている。この結果によれば、首都圏に比べて、地方都市のキャップレートが高くなっている。それは、首都圏のほうが家賃の期待上昇率が高いことを反映して、キャップレートが低くなっていると考えられる。 さらに、マンションのほうが戸建てよりも高いキャップレート値が観測されている。これは、区分所有マンションには、プライバシーの問題や隣戸との負の外部性、あるいは建替え問題などがあるために、高くなっていると考えられる。(YF) |
価格(税込) | 750円 | 在庫 | ○ |
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