季刊 住宅土地経済の詳細

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タイトル 季刊 住宅土地経済 2008年冬季号
発行年月 平成20年01月 判型 B5 頁数 40
目次分類テーマ著者
巻頭言住宅の長寿命化にむけて牧野徹
座談会景観政策と住環境浅見泰司・石井喜三郎・金本良嗣・山本和彦
研究論文ファミリー向け賃貸住宅の拡充にむけたUPREITの活用三毛門豪・岩崎千恵
研究論文不動産証券化市場における個人の危険回避度と投資行動沓澤隆司
海外論文紹介混雑料金と都市境界によるスプロール抑止藤嶋翔太
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 ファミリー向け賃貸住宅供給がほとんどないことが政策課題とされて久しい。しかしながら、実態は逆の方向に動いており、新築貸家の平均床面積は、90年代半ばから2000年代初めにかけて50平米を上回っていたのが、最近では再度40平米台に落ちている。
 ファミリー向け賃貸住宅の供給が少ない最大の理由としてあげられていたのは、借地借家法による借家権保護であった。この問題に関しては、2000年から定期借家制度が始まり、一応の解決をみた。しかしながら、定期借家のシェアはあまり大きくなっておらず、ファミリー向け賃貸住宅の供給に対するインパクトはこれまでのところ小さかったと言わざるをえない。
 広めの賃貸住宅が供給されないもう一つの理由は、税制上の優位性から都市近郊地主がもっぱら小規模賃貸住宅を供給しており、これらが賃貸マンション化されないことである。
 賃貸マンション経営を行なうには、かなりの資金力と企画・経営力が必要であるので、都市近郊地主が自力で乗り出すのは困難である。最近は、住宅系リートを含め、経営力のある主体が賃貸マンションを供給するようになっているが、もっぱら都心の物件を対象にしており、中堅ファミリー層向け賃貸住宅はほとんどない。

 三毛門・岩崎論文(「ファミリー向け賃貸住宅の拡充に向けたUPREITの活用」)は、アメリカで広く用いられているUPRE ITの仕組みを導入することで、ファミリー向け賃貸住宅の供給を増加させることができないかを、実証的に分析している。
 土地所有者の選択として、(1)鉄骨2階建て等の小規模賃貸住宅を自ら供給する、(2)マンション業者に土地を売却して、分譲マンションにするという2つに加えて、(3)賃貸マンションを建てるという選択肢を考える。ここで(3)第三の賃貸マンションを建てるというのは現状では現実的な選択肢ではない。土地所有者個人には企画・経営のノウハウと能力がないからである。土地を住宅系リート等に売却すれば、企画・経営力の面は解決するが、売却時に譲渡所得税等の課税がなされ、また、売却収入を金融資産にしておくと、相続税課税の面で不利になる。
 アメリカにおけるUPREITの仕組みは、土地所有者がリートに土地を現物出資した際に、リミテッド・パートナーとしてリートに参加すれば、譲渡所得税を繰り延べることができるというものである。この仕組みは日本ではまだ導入されていないが、これを導入すれば、賃貸マンションを経営する能力のあるリートに土地を出資して、ファミリー向け賃貸住宅を供給することが促進されるのではないかと予想される。
 三毛門・岩崎論文では千葉県のデータを用いて、UPREITを導入するとリートによる賃貸マンション供給がアパート経営や分譲マンションに比較して有利になる地域がどの程度あるかを検証している。その結果、鉄道駅の近く等の条件があり、一定程度の利便性がある地域では、リートによるファミリー向け賃貸住宅の供給が可能であることが示唆されている。

 沓澤論文(「不動産証券化市場における個人の危険回避度と投資行動」)も不動産証券化を扱っているが、供給サイドではなく、不動産証券に投資する家計サイドの行動を分析している。当然のことながら、不動産証券への投資は、リスク回避度と時間選好率に依存する。沓澤論文では、インターネットを活用したアンケート調査によって、個人属性や資産状況に加えて、危険回避度や時間選好率に関するデータを収集し、それらを用いて、これらが資産選択にどういう影響を及ぼすかを実証している。なお、この推定を行なう際に、危険回避度自体が内生変数であることに注意して、操作変数法を用いている。
 主要な結論としては、リートや不動産証券化商品は不動産や株式と同様に危険選好者に選択される資産となっていることや、投資の可否の判断に関しては、危険回避度の影響は、危険回避度が高い者に選好される公社債と、危険回避度が低い者に選好される株式や不動産の中間に位置していることなどがあげられている。これらの結論は、自然なものであるが、貴重な個票データをより有効に活用して、シャープで有益な実証分析が行なわれることが期待される。(YK)
価格(税込) 750円 在庫

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