季刊 住宅土地経済の詳細

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タイトル 季刊 住宅土地経済 2014年冬季号
発行年月 平成26年01月 判型 B5 頁数 40
目次分類ページテーマ著者
巻頭言1都市の再生・地域活性化におけるJリート市場の役割岩沙弘道
座談会2-19マンションの管理浅見泰司・親泊哲・川田邦則・山崎福寿・吉田修平
論文20-28消費/資産比率、不動産資産と日本の株式市場青野幸平・祝迫得夫
論文29-35不動産担保融資と売買価格のマイクロデータの構築小滝一彦・倉島大地・水永政志・渡部和孝
海外論文紹介36-39近隣選択と近隣効果への包括的アプローチ上杉昌也
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不動産はリスク資産として家計のポートフォリオの中で極めて大きなシェアを占める。そのため、株式の収益率(リスク・プレミアム)を説明するためには、理論的には不動産を含めて定義されたポ ートフォリオに基づいて分析することが理想的である。しかし、実際には家計の保有する不動産は同一ではないし、価格の変動それ自体も捉えにくい。この点で、株式の収益率の説明に不動産をどのように取り込んでいくか、という観点は興味深い。
青野・祝迫論文「消費/資産比率、不動産資産と日本の株式市場」 は、 Consumption basedCapital Asset Pricing Model(C-CAPM)に基づく実証分析において、この問題を考えているとも言える。青野・祝迫論文は、日本の株式の収益率について、消費・資産比率を用いて予測力を検証し、その中で不動産の価格変動の影響も捉えようとしている。
C-CAPM では通常の CAPMとは異なり、株式のリスクプレミアムを、マーケットポートフォリオではなく、消費との相関に基づいて説明しようとする理論である。しかし、その実証での説明力が低いことから、分析方法の改善が試みられてきた。
そこで、家計の消費は長期的にはそれが保有する資産に依存して決まることを考慮して、単純に消費と株式の収益率の関係を分析するのではなく、家計の消費と資産の長期的な共和分関係に着目し、そこからの誤差項を消費変動リスクとして分析するのが青野・祝迫論文の基本的な戦略である。
青野・祝迫論文では、そのような共和分関係として家計の資産の定義を2種類用いている。日銀が作成する資金循環表のストックデータをそのまま用いたものと、このデータに加えて土地価格のデータを用いたものである。
これらの共和分関係の誤差項が株式の収益率の将来予測に役立つかを検証し、90年以降のバブル崩壊前後以降で不動産価格の変動を含めた誤差項の予測力が比較的高いことが示されている。
また、クロスセクションでの株式収益率の説明力については、 Fama-French のスリー・ファクター・モデルとも比較している。そこでは不動産価格を含めた共和分関係からの説明力がかなり高くなるが、説明力の点では Fama-French に及ばない結果となっている。
分析にはまだ改善の余地が多く残されているようにも思われるが、長期的な観点での株式の収益率の説明において、不動産価格の変動を考えることの重要性が示されたという点でその意義は大きい。

従来、日本の金融機関の融資は、土地担保金融と言われてきたように地価に連動した融資がなされてきた。1990年代以降、地価の下落が進むとともに、抵当権自体も、その行使に対する執行妨害などが社会問題化した。これに対して銀行は担保の対象資産を多様化させたり、融資手法などの変容も進めたりしてきた。そのようななかで、土地担保金融という言葉自体も次第に忘れ去られてきた印象がある。
しかし、今なお、日本の銀行融資の中で主要な位置を占めるのは、土地を担保とする融資であることに大きな変わりはない。
小滝・倉島・水永・渡部論文「不動産担保融資と売買価格のマイクロデータの構築―銀行融資が地価に及ぼす影響」は、このような土地を担保とする融資と地価上昇の因果関係を検討した分析である。不動産価格に対する融資比率(LTV)、いわゆる担保掛け目が増加した場合に不動産価格に正の影響が及ぶのかという問題を分析している。このとき、注意しなければならないのは、土地価格が上昇すれば、その定義から、土地に対する LTV は当然に低下してしまうことである。すなわちLTV と不動産価格の分析には同時性の問題が存在している。この問題を克服するために、小滝・倉島・水永・渡部論文では、操作変数法を用いて推計し、LTV の上昇が土地価格を上昇させる効果を検出している。
小滝・倉島・水永・渡部論文で最も興味深い点は、東京23区の土地取引について土地売買の成約価格データと登記簿の抵当権設定デ ータをマッチングさせて構築した詳細なデータを用いている点である。今後、これらのデータを用いた銀行融資と不動産取引の関係について、より詳細な分析が期待される。(H・S)
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