PUBLICATION
No.63
目次
分類 | ページ | テーマ | 著者 |
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巻頭言 | 社会基盤整備としての良質な住宅取得支援 | 南敬介 | |
座談会 | 住宅の安全性確保のために | 小川富由・小堀徹・丸山英氣・山崎福寿 | |
研究論文 | ホームレスの側からみた自立支援事業の課題 | 鈴木亘・阪東美智子 | |
研究論文 | 地価を考慮したVAR分析 | 櫻川昌哉・櫻川幸恵 | |
研究論文 | 不動産価格のヘドニック分析における品質バイアス | 水永政志・小滝一彦 | |
調査研究リポート紹介 | 住宅・不動産税制の日仏比較 | 伊藤悟 |
いまだにホームレスの人たちの姿は減らないので、ホームレスに対する住宅政策はどうなっているのだろうかという疑問を持たれる方々も多いだろう。ホームレス自立支援法が施行されてから2007年には5年目になる。
鈴木亘・阪東美智子論文(「ホームレスの側からみた自立支援事業の課題」)は、ホームレス側の実態調査を通じて、この法律に基づく自立支援施策の現状に切り込んでいる。
実態調査によってわかったことには、以下のようなものがある。
?自立支援センターの利用を希望しないホームレスが多いのは、ある程度合理的な選択を行なった結果であると推測できる。
?自由を失う、家族や動物と一緒に入れない、荷物や居場所を失うことなどが、支援センター利用の障害になっている。
?入所希望者の中には、必ずしも就労自立を目指すのではなく、行政の福祉的支援を求める就労困難層が含まれる。
これらの実態調査結果から、今後の政策の方向性について、以下のような論点を提起している。
?自立支援事業ではカバーできない対象者に対して、自立支援センターを経ることなくアパートに入居させる事業(東京都がすでに始めている)のような他の施策の必要性。
?動物や家族、生活の自由度、個室化、入所期間の長期化、再入所の容認といった自立支援センターの改善。
?福祉との共同施策として、半就労・半福祉の形態を容認するといった福祉的支援の拡大。
櫻川昌哉・櫻川幸恵論文(「地価を考慮したVAR分析」)は、時系列分析手法のひとつであるVAR分析を用いて、地価を含めたマクロ経済の分析を行なっている。80年代バブルとバブル崩壊およびその後の回復時期を含む1982年から2005年までのデータを用いて、いくつかの興味深い結果を導いている。
第1に、地価ショックは、生産、インフレ率、名目金利、貨幣量を増加させる効果をもったが、生産ショック、インフレショック、金利ショック、貨幣ショックは、いずれも地価にはほとんど影響を与えない。
第2に、この期間全体では、地価ショックは、生産、インフレ率、名目金利、貨幣量を増加させる効果をもったが、地価が下降局面に入った1992年以降に限定して分析を行なうと、地価ショックは生産に影響を及ぼさなくなる。著者たちは、その理由として、地価の下落局面では、債務支払いが土地の担保価値を下回り、債務の減免や放棄の再交渉が行なわれる可能性が高く、地価の下落が貸出を収縮させる効果が弱まることをあげている。
いずれも興味深い結果であり、今後のより詳細な分析が期待される。
ヘドニック価格関数の推定においては、データの制約からすべての重要な変数が得られないことが多く、このことによってバイアスが発生することが悩みの種である。水永政志・小滝一彦論文(「不動産価格のヘドニック分析における品質バイアス」)は、東京都で1991年1月から2005年4月に取引された中古マンションの約12万件の成約データを用いて、この除外変数問題を検証している。
除外変数となっているものとして、物件のグレードと周辺環境を想定している。物件のグレードについては、時代が新しくなるにつれてグレードが上がる傾向があると想定している。周辺環境については、逆に、以前はマンション適地でないと思われていた場所に新規建築が拡散していることから、立地環境が悪化していることを想定している。
除外変数によるバイアスの検証手法としては、固定効果分析を段階的に適用し、それらを比較するというユニークなアプローチを採用している。具体的には、鉄道路線、最寄り駅、町丁目、個別マンションという4つのレベルで固定効果分析を適用し、?築年数の係数は、全データによる単純な回帰と個別マンション固定効果とほぼ同じで、その中間で、地域をコントロールすると減価が過大に推定される、?床面積の弾力性はマンション名固定効果では1を若干下回り、他の推定では1割程度以上の過大評価となるといった興味深い結論を導いている。ただし、どのレベルの固定効果推定がバイアスのない推定値を与えるかについては、議論の余地があるところである。今後の研究の積み重ねに期待したい。(KY)