RESEARCH
空き家(放置家屋)事例
1.調査の背景・目的
近年、相続等を契機に遠方に居住する空き家所有者や相続人不明の空き家が増加していること等が背景となって、強風等による管理が不十分な空き家の外壁材や屋根材の飛散、老朽化が進む空き家の倒壊、空き家敷地内での雑草の繁茂やゴミの不法投棄、害虫等の発生など、空き家に関する問題は全国的なものとなっている。
空き家の発生が地域にもたらす外部不経済(迷惑)については、直接被害が及ぶ近隣住民の関心は高いものの、所有者の迷惑意識が低く、また地方公共団体においても空き家対策への行政関与の必要性について市民のコンセンサスを得るに至っていないケースが少なくないなど、管理が不十分な空き家や老朽化が進み倒壊危険性が高い空き家等による周辺への外部不経済の実態や損害額等の把握、見える化が課題となっている。
そのため、空き家の適正管理や空き家化の予防について所有者の理解を得るとともに、空き家対策に取組む地方公共団体がより的確に市民への説明責任を果たすことができるよう、空き家の発生による外部不経済の実態と損害額の試算に係る調査を実施した。
なお、本調査は当センターが国土交通省住宅局住宅総合整備課住環境整備室の提案により、平成24年度プロジェクトとして実施したものである。
【空き家発生による外部不経済の事象】
防災性の低下
防犯性の低下
生活環境の悪化
景観の悪化
その他
2.調査期間
2012年8月~2013年3月
一部の地方公共団体では、空き家の管理不全により隣家等の建物損害や死亡事故等の人身損害を発生させた場合に、空き家所有者は民法第717条による損害賠償責任を負う可能性があるとの注意喚起を行っている場合があるが、これまで空き家を含めた建物や敷地内の工作物の管理責任に係る判例を整理したものが必ずしもなかった。
このため、空き家所有者に対する損害賠償責任や適正管理の意識付け等を図るための基礎資料として、空き家を含めた建物や敷地内の工作物に関連する民法第717条の判例を収集し、裁判所の所有者等の管理の瑕疵に関する認定内容、賠償額の算定の考え方や基準等を抽出・整理した。
判例と同様に、空き家所有者等への適正管理の意識付けや注意喚起を図るための基礎資料として、火災や倒壊、害虫・害獣発生*1、雑草繁茂などの空き家が原因となった外部不経済の典型事例を収集し、事故発生時の当該空き家の管理状況や損害内容(物件損害、人身損害等)、損害の範囲、被害額(自治体の対応コストを含む)などを、事例写真を含めて整理した。
*1:害虫・害獣発生の被害については事例収集を行ったが、以下の事例には含まれていない
外部不経済事例の概要
事例
外部不経済事例の概要(PDF)
被害の概要
火災
倒壊
飛散等
雑草繁茂
ゴミ
不法投棄
その他
※その他の被害/(1)=不法滞在、(2)=通行妨害
*2:隣家3棟全焼/4棟部分焼け
*3:空き地の雑草等の除去に関する条例
空き家や損害を受けた隣接住宅等の建築時期や取得時の価格、詳しい損害内容などが分からない場合でも、地方公共団体の職員等が簡易に損害額を試算することが可能なように、物件損害と人身損害のそれぞれケースについての簡易な算定方法を設定し、火災や倒壊等のモデルケースでの損害額を試算した。